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ポリエチレン原料の約2倍に発泡させた「デュラウッド」はヒイトカッターで切れるのか?

 ヒイトカッターで使える新たな材料を探していてポリエチレン原料の約2倍に発泡させた押出成形品「デュラウッド」というプラスチック材料に行き当たりました。
発泡材料ならヒィトカッターで切れるかもしれない、とメーカーに問い合わせてみたところ、テスト用にとサンプルを送って頂けることになったので、試してみることにしました。

デュラウッドとアイセルウッド
 デュラウッドシリーズは主原料のポリエチレン(PE)を約2倍に発泡させた押出成形品で、自動車部品や自動車部品の搬送資材で用いる緩衝材、航空機部品やモーターなど大型部品搬送時の保護材として、ラインパレット、通い箱、低温倉庫や食品倉庫の壁面保護材等々、幅広い分野で使われているとのこと。
 普通の発泡スチロール(PS)ですと発泡倍率は40〜90倍くらいでよほど固いものでも20倍程度ですから、2倍っていうのは途轍もない材料密度に思えます。
 届いたサンプルは、一見すると普通に硬くてゴツい樹脂の板で、発泡材料という雰囲気はまるで感じられませんが、手に持ってみると見た目より明らかに軽く、普通のカッターナイフ(刃の折れるやつ)を当てると意外に刃の通りが良く容易に切り込めます。
 またデュラウッドの比重は0.52ですから水に浮き、しかも「水、油を吸わない」「木のように裂けない」と木材の弱点を解決した超均一で加工性に優れた木材の進化版、といった感じでしょうか。例えば従来木材を使っていた部分を単純にこのデュラウッドに置き換えるだけでも充分な機能向上が見込めそうです。

 しかしこの黄色い板、どこかで見覚えがあるな…と記憶を辿ると、業務用ビデオカメラの超望遠レンズ収納ケースでレンズ鏡胴を支える間仕切り、自動車部品の通い箱の中で重いシャフトを安定して固定するスペーサー、それに大型ショッピングモールのバックヤードで、運搬台車が壁面やドアに接触した際に保護する腰板(保護プレート)など、結構色々な場所で見ていたのに気づきました。製品ホームページにも用途として挙げられており、他にもカーゴトラックの内側の保護材として多く採用されているとのこと。

株式会社アイワさまホームページから一部拝借
株式会社アイワさまホームページから一部拝借

 さて本題のヒイトカッターでデュラウッドが切れるか?ですが、結論から言うと「切れなくはないが実用的ではない」でした。
 理由はやはり発泡倍率にあります。発泡スチロールの様な普通の発泡倍率ならばヒイトニードルによって溶解した材料はごく少量ですので、さらに加熱される事でほぼ瞬時に蒸発してしまいますが、デュラウッドでは「倍率が低い=密度が高い」なので溶けると液状化する量が多過ぎてニードルの熱量が足りなくなって温度が下がると蒸発もしにくくなるため、切断面に液溜まりができて固まってしまうのです。
 デュラウッドに直接接触しておらず温度が高いニードルの部分へと、前後にスライドさせると切断速度は稼げるものの、切断面がなめらかになりにくくなってしまいます。押し引きなしで真っ直ぐ速度を維持して切れれば、かなり加工の自由度が得られるだけにこれは残念なところです。
 テストは板厚5mmのサンプルピースをヒイトカッターの出力Maxで切断し速度を測りましたが、ニードルを動かさず真っ直ぐ当てる条件で45mm/分、押し引きしながらだと78mm/分でした。比較のため試した他社製ですと6〜24mmとさらに低い速度でしたのでそれらよりはマシですが、やはり時間がかかり過ぎます。
ヒートカッターによるサンプルピース切断実験
サンプルピースを切ってみた。一番長く切れているのが押し引きしながらの切断

 意外に良く切れたのがニクロム線を張った従来の弓形タイプの大型業務用機でした。カッター部=ニクロム線で細いので切断幅が狭く、その分材料の液化量が少なく蒸発もしやすいためきれいな切り口になります。ただ切断幅が狭いのが災いして切った面が再溶着してしまううので、作業性としてはこちらもやや微妙です。

 というわけで、デュラウッドはヒイトカッターで切断するには向かない、と云う残念な結果だったものの、では何故ここで紹介しているかと云うと、これから広い用途で使われるようになるとても面白い新素材だと思うからです。
 現在の用途はほぼ業務用のみ、一般向けの材料としては販売されておらず、ホームセンターなどで寸法指定して注文すれば商社を通じた取り寄せは可能だそうですが、願わくば大小の板やブロックを店頭に置いて選べる様にしてもっと一般へアピールして欲しいと思います。
 加工性はそもそも木材に近い硬さですのでノコギリやカッターでも普通に切断できますし、メーカーでも加工にウォータージェットやNC切削を用いるそうなので、ホビー用の小型旋盤やフライス盤での切削加工は容易でしょう。
 そうなれば強度があって軽くて水に浮く、水や油を吸って変形することがない、という特性が活きてくるはずです。例えば…高専ロボコンのような競技用ロボットを構成するパーツ製作などに適する材料ではないでしょうか?
 導電性のアイセルウッドのほか、様々なバリエーションもあるのでさらに考えれば応用が相当効きそうです。

デュラウッドについては株式会社アイワさままでお問い合わせください。

株式会社アイワ ホームページ
株式会社アイワホームページ

最後にサンプルを提供して頂きました株式会社アイワさまにお礼申し上げます。